双子ママになったら、エリート心臓外科医の最愛に包まれました
「万年筆を落としてしまって探していたのです」

こちらを振り向いた彼はモデルのように綺麗な顔をしていて、目を奪われてしまった。

これが蒼斗さんとの出会いだ。

「そうだったんですね。探すのをお手伝いします」

「いえいえ。お気になさらずに。仕事の方に戻っていただいて大丈夫ですよ」

「ちょうど昼休憩に入ったところなので。お手伝いさせてください。この辺りでなくされたのですか?」

「すみません。ありがとうございます。さっきそこの桜並木のベンチのところで手帳を開いたので、そのときに落としたのかと思ってこのあたりを探していたんです」

「分かりました。この辺りを重点的に探してみましょうか」

桜並木の下に広がる砂利をかき分けたり桜の木の間を覗きこんでみたり、手分けをして探し始めた。

「万年筆、何色ですか?」

「黒です。このくらいの大きさで、ゴールドの文字で筆の上の辺りに名前が筆記体で書かれていて……」

必死に探す姿を見て、その万年筆は彼にとって大切なものなのではないかと思われた。
< 35 / 171 >

この作品をシェア

pagetop