セカンドマリッジリング ―After story—


 颯真(そうま)花那(かな)の暮らす家から彼の実家はそう遠くない、高速に乗って行けば一時間もかからない距離だった。それでも実家につくまでの時間が花那にはやけに長く感じてしまう、緊張から喉が渇いて何度も水のペットボトルに口を付けた。

「もうそろそろね、前に来たのは二年前だったかしら」

 花那がついて行かなくても颯真が何度か実家に帰っていた事は彼女も知っている。でも彼女が実家に顔を見せに行くのは本当に二年ぶりだったのだ。
 だからこそ余計に緊張するのかもしれない、そこにいないような存在として扱われると分かっていても。

「無理することはない、花那は車の中で待っていたっていいんだ」

「ここまで来たのよ、そうはいかないわ。きちんと挨拶をしなきゃ、これから先の私たちのためにも」

 挨拶をすれば何かが変わるわけではない、そんなことは分かっている。それでも何もしないよりはいいはず、少しでも前に進むために。
 大きな門に広い庭、一本道を真っ直ぐに進み、奥にある駐車スペースに車を停めた。

「じゃあ、行こうか。本当に少しでも嫌な事を言われたら、その時は……」

「大丈夫よ、私はこう見えても打たれ強いの。颯真さんとの結婚生活で鍛えられたから、ね?」

 そう言って微笑む花那に颯真は少し困ったような顔をしたが、それでもすぐに花那の手を握ると屋敷の玄関に向かって歩き出した。


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