セカンドマリッジリング ―After story—
「良い息子や良い兄であることが深澤家の長男である俺の役目だと思ってたんだ。でもそれが深澤家にとって何の意味もなさない事に気付いて、今は少し二人と距離を置いている」
「そうだったのか……」
妹である真由莉がやけに颯真に執着したのもそんな事があったからなのかもしれない。何でも言うことを聞いていた涼真が変わったことで、颯真の方が扱いやすいと母や妹は考えたのだろう。
涼真は父の斗真と同じく頑固な部分もあり、一度こうと決めたらなかなか考えを変えない。それが彼女たちには都合が悪かったのかもしれない。
しかし今問題なのはあの二人の事ではなく深澤カンパニーの事であるため、その話題はさっさと打ち切った。
「きっと父さんはそれだけでは仕事を覚えられるわけが無いと言い出すだろう。そこで、だ……颯真のサポートとして花那さんにも仕事を手伝ってもらいたいと思っている。その方が二人で動ける分、やりやすくもなるだろうし」
「なるほど。しかし花那まで危険な目に合わせるわけには……」
涼真の言いたい事が分からないわけではない、その方が犯人を捜すのにも都合が良くなると言うことも理解できる。ただ、颯真は心配なだけだ。
誰よりも大切な妻を少しでも危ない状況に置きたくない、それが彼の本音で。