セカンドマリッジリング ―After story—
「ふん、随分と余裕だな? 涼真の代理と言ってもそう簡単な仕事でないことくらいお前も理解しているはずだが、それで覚えられると言うのか」
「いいえ、俺一人では無理でしょう。だから妻の力を借りたいのです、彼女ならば俺をサポートする事にも慣れていますから」
涼真の予想していた通りの父親の反応に、颯真は内心ホッとしながら言葉を慎重に選んでいく。ここで花那の協力を反対されると厄介だ、計画も予定通りに進められなくなる可能性が出る。
五年間自分を支えてくれた妻だから、誰よりも信頼できるというように花那を隣に立たせる颯真。その様子を見て斗真はしばらく思案していたようだったが……
「ならば花那さんには、涼真のサポート役の高峰に仕事を教えてもらうと良い。お前の妻がどれだけ深澤家の役に立つのか、お手並み拝見だな」
「……花那は、素晴らしい妻ですよ。父さんにもいずれ分かります」
斗真の言葉に怒りで爆発しそうな気持ちを抑えて、颯真はなるべく落ち着いた様子で返事をした。
花那は深澤家にとって都合の良い嫁ではなく、自分の大切な妻なんだ。と、颯真はそう心の中で何度も繰り返さずにはいられなかった。
「それでは、詳しい話については電話します。母さんや真由莉にもよろしく言っておいてください」
「ああ、分かってる」
最後にそれだけ言うと、颯真は花那を連れて父の部屋を出る。そのまま母や妹とは顔を合わせないように急いで深澤の家を後にした。