セカンドマリッジリング ―After story—
「お久しぶりですね、颯真さん。涼真さんが戻られるまで私が貴方達を全力でサポートさせて頂きますね」
颯真と花那が会社の自動ドアを過ぎた瞬間、待っていたかのように脇から出てきた小柄な人物に話しかけられる。少し癖のある短い髪、清潔感のあるピシッとしたスーツ姿に黒縁のメガネが印象的な男性だった。確かに仕事が出来そうで、補佐向きといった感じの雰囲気がある。
「高峰さん、兄の事を待っていてくれてありがとう。これからしばらくの間、俺達夫婦をよろしくお願いします」
「はじめまして、颯真さんの妻の花那です。ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」
深々と頭を下げる花那に、高峰は慌てて自分の自己紹介をする。普段は補佐である彼の方が頭を下げることが多いせいか、少し戸惑っているようでもあった。
彼の名前は高峰 真実、年齢は颯真と同じ三十二歳だそうだ。童顔のためかもっと若く見えるが、あえて二人は何も言わずにいることにした。
「そんな、私はただの補佐にすぎません。お二人が仕事をしやすいようにお手伝いをさせて頂くだけ、ですからそう畏まらず気軽に話しをしてくださいね」
「ありがとう、高峰さん」
高峰は話しやすくそれでいて細かいところまでよく気が付く。
繊細な気配りと丁寧な仕事で周りからの評価も高く、他の部署からの誘いもあるらしい。それでも彼は、涼真の補佐をすることが自分に一番向いていると笑って話したりもした。