セカンドマリッジリング ―After story—
颯真も花那もこうして涼真を待っていてくれてるのが、高峰で本当に良かったと心から思っている。絶対的な信頼関係とでもいうのだろうか、高峰は涼真を決して諦めたり見限ったりすることは無いと信じることが出来る。
本当ならば、涼真も高峰を連れて一緒に行動したいと思ったはずだ。それが出来なかったのは周りに少しでも怪しいと思われる行動は取れなかったせいに違いない。それほど慎重に涼真は動くしかなかったのだ。
「ところで……」
「おやおや、これはこれは! 深澤社長補佐の代理が来ると聞いたんですが、まさか貴方だったとは。本当に社長のご子息は優秀な方ばかりで羨ましい」
高峰が何かを言いかけたところで、それに被せるように大きな男の声が聞こえてきた。いつの間に部屋に入ってきていたのか、颯真と花那の後ろには中年のスーツ姿の男性が立っていた。
じろじろと不躾に品定めをするような瞳、誰もが不快に感じるそれが颯真から花那へと移動する。思わず颯真は妻を自分の背中で隠した。
「……伊敷専務、今日は何故こちらに?」
「今、代理を見に来たと言ったばかりだろう。所詮は行方不明になるような社長補佐の部下だな、この程度の対応しかできない役立たずだ」
高峰の対応が気に入らなかったのか、伊敷という男はあからさまに彼を見下してくる。これは今に始まったことではないのか、高峰は全く気にする様子はないが。
それにしても気になるのは……伊敷専務が涼真や斗真に良い感情を持っていないという事がハッキリと分かることだ。本人も隠す気がないのか、涼真たちに対する侮蔑の言葉も平気で口にする。