セカンドマリッジリング ―After story—
颯真の言葉に彼の母の顔が一瞬で変わる、あなたは何を言っているの？ とでも言うように。
それもそのはず、彼女にとって花那は深澤家の一員になど入っていい人間ではない。花那のようにこの家にとって何のメリットもない結婚相手など、颯真の両親は認められるわけがないのだから。
だがそう言われたからといって黙って引き下がるような女性ではない、それは花那も分かっている事で……
「颯真はこう言ってるけど、貴女はどうするつもりなの？ ねえ、花那さん？」
「私は……」
その鋭い視線、花那に向ける厳しい表情だけで「遠慮しなさい」と伝えてくる。ここに来るといつもこうなのだ、何度も繰り返してきたこのやり取りは永遠になくならないのかもしれない。
今までは諦めてきた、でもこれからは颯真の本当の妻だから引き下がれない。そう思って花那が自分の気持ちを口にしようとすると……
「母さん、花那は俺の大切な妻です。彼女にそんな態度をとられるのなら、俺はこれで帰ります。兄の事は俺も個人的に調べますので、それでもいいんですね？」
「え、颯真さん？ そんな……」
思いもよらない颯真の発言に驚いたのは彼の母も同じだったようで、信じられないという顔をして唇を噛んでいた。
「颯真、あなた……！」
「どうしますか？ 母さんが選んでください、花那を中に入れるか俺達を帰らせるかを」
