セカンドマリッジリング ―After story—
颯真は真っ直ぐに母を見つめたままだ、自分の考えを変える気はないとでも言うように。そんな颯真の様子に彼の母は苛立ちを隠せないような表情を見せ、そのままプイッと部屋の中へと戻っていってしまう。
入るべきなのか、立ち去るべきなのか迷い、颯真と花那が顔を見合わせていると……
「二人とも中へ入りなさい、今は涼真の話をする方が大事なことだろう」
中から声をかけてきたのは颯真の父で、それを聞いた二人は開いたままだった扉から中へと入る。広い部屋の中の奥、ソファーに座った初老の男性が颯真の父である。
深澤コーポレーションの実権を握る颯真の父は、恐ろしいほど貫禄があり一筋縄でいくような人間ではない。
「久しぶりです、父さん。それで兄さんから何か連絡は……?」
「いや、涼真からは何も連絡はない。警察に捜索願いも出したが、どうなるか……今度は探偵を雇おうかとも思っている」
そう話す颯真の父の顔色は彼が以前会った時と違い、かなり良くなさそうだ。母もそんな父の話を聞いてハラハラと涙を流している。
そんな二人の様子を見て、颯真は複雑な気持ちになる。もし今回いなくなったのが涼真でなく颯真なら父と母はどんな反応をしたのだろうか、と。
今さら、そんな事を知ってどうにかなるわけでもないと颯真も分かっているのだが。