セカンドマリッジリング ―After story—


「ええ、それ以上でもなく以下でもなく……ただそれだけ。それが貴方の言う父親の役目なんでしょうけれど」

 普段穏やかな性格の颯真(そうま)からは考えられないほど攻撃的な態度に花那(かな)の方が驚いてしまう。いつも冷静で怒る姿など一度も見せたことのない彼のその意外な一面に。

「ずいぶん遠回しな嫌味を言うようになったな、昔は涼真(りょうま)なしではまともに私と話す事も出来なかったくせに」

 息子のそんな態度に驚く様子も見せない彼の父にも花那は戸惑った。大企業の敏腕社長と呼ばれるだけあって貫禄もあるのだろうが、ここまで言われて眉一つ動かさないそんな斗真(とうま)が怖ろしい。
 気弱になってはダメだと思いながらも、花那は少しだけ颯真の斜め後ろに隠れるように立ってしまう。

「……大丈夫だ、花那。君は俺が守るから」

 小さな声で颯真が花那にそう告げる、その言葉はもちろん嬉しいが無理はして欲しくない。それが花那の本音だが、それを伝えることすら今は難しい。
 しかしそうやって颯真が花那を庇うような仕草も斗真は気に入らなかったらしい。

「そんな深澤(ふかさわ)に何の利益も(もたら)さないような女と結婚までして、お前は何故そう私に楯突こうとする?」

「おかしなことを言わないでください。俺は利益と関係なく花那を選んだんです、自分には彼女が必要だから」

 花那を馬鹿にしたような言い方をされ、颯真もそれに対する不快感を隠そうとはしない。今の颯真にとって花那は唯一無二の存在、そんな彼女を貶める様な発言は到底許せなかった。


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