セカンドマリッジリング ―After story—
「ふん、話にならんな。どう言おうとお前は深澤家の一員だ、その結婚がこの家や企業にとって何の利益も生み出さないで良いと思っているのか?」
あまりに酷いその言葉に、花那の方が唖然としてしまう。今まで何度か顔を合わせたことはあったが、ここまで自分や仕事の事しか考えていない人だとは思っていなかった。
大企業の敏腕取締役、そんな立場が彼をここまで傲慢な人間にしたのだろうか?
「俺はこの家や深澤グループのために生きているわけじゃない。あなたとは違う人間なんです、俺も母さんも……そして兄さんも」
この家にずっと縛られてきた母や兄、その事を考えればさっさと逃げたした自分の意見などまともに聞いてもらえないのは分かっている。それでも颯真は言わずにはいられなかった。
この家の、父のそんな態度とやり方がこの家族をどれだけ追い詰めているのかを。
「ふん、言いたいことはそれだけか? 私も暇じゃない。そんなくだらない話ではなく、もっとこの家のためになる事でも考えて聞かせてみてはどうなんだ」
「父さん!」
斗真の頭の中にあるのはこの家と深澤グループの利益に関わる事だけだ、分かっていた事だがこうして向かい合うと余計にその事が颯真を落胆させる。
花那はそんな二人のやり取りに口を挟むことも出来ず、ただ颯真の袖を強く掴んでいる。そんな自分を歯痒く思いながら、ただ黙って立っているだけの無力さが悲しかった。