セカンドマリッジリング ―After story—
「とにかくこのまま涼真が戻ってこない場合も考えて、颯真もきちんと覚悟を決めておけ。何を言おうとお前が深澤の人間であることからは逃げられない。それでも歯向かうというのなら、その時は……分かっているな?」
一方的な話の終わらせ方、それも息子を脅すかのような斗真の台詞に颯真はぎりっと歯を食いしばる。彼の言葉の意味が花那に伝わらないようにと願いながら、それでも腸は煮えたぎるように熱かった。
――この人はいつもそうだ。俺自身ではなく周りを傷付けて息子に言う事を聞かせようとする。そんな自分が正しいと信じて疑わないから平気な顔をしたままで。
「そうやって母や俺達に言う事を聞かせて、虚しくなりませんか?」
「……そう思うのなら、最初からお前たちが素直に言われままに動けばいい」
どこまでも一方通行なのだ、颯真と斗真は。分かりあう努力は理解されず自分の言い分だけを押し付けてくる、そんな父親との関係を変えることは出来ない。
このままここに残れば斗真の攻撃の矛先は花那に向かいかねない。そう思った颯真は花那を先に部屋から出るように伝え、彼女が部屋の外に出るのを確認した後で口を開いた。
「……もしこの事に花那を巻き込んだとしたら、たとえ父さんでも許しません。それだけは覚えてください」
何があっても譲れない思いを言葉にして、颯真は小さく頭を下げるとその部屋から出て行った。