セカンドマリッジリング ―After story—
「颯真さん、大丈夫だった?」
奥の部屋から遅れて出てきた夫に気付くと、花那はすぐに傍に寄り彼を気づかった。さっきまでの親子とは思えないような会話に、花那も颯真の事をとても心配していたのだから。
そんな妻の優しさに心が癒される、どんなに両親が颯真に関心がなくても彼女だけは違うと分かるから。
「大丈夫だ、いつもでもここに居ては君にも負担がかかる。もう帰ろう」
そう言って花那の肩を抱こうと、颯真が腕を伸ばしたその時。慌てて階段を駆け下りてくるような足音が聞こえて……
「兄さん! 颯真兄さん、来ていたのね⁉ もう、パパもママも全然教えてくれないんだから」
すぐ傍の階段から勢いよく姿を現したのは、淡いクリーム色のワンピースの似合う二十歳くらいの女性。ふわりとした軽くウエーブのかかった栗色の髪に大きな瞳、桜色に染まった頬と艶のある唇が印象的である。
「……真由莉、いたのか」
小さくそう呟いた颯真、その隣で花那は少し彼から離れ真由莉と呼ばれた女性に頭を下げた。彼女もまた、この深澤家の一人だから。
「お久しぶりです、真由莉さん」
「……お久しぶりです、今日は来てたんですね。お義姉さん」
真由莉の含みを持たせた言い方に、颯真が口を挟もうとするがそれを花那が手で止めた。彼女の言うことは事実で、今まで花那は本当に滅多にこの家に顔を出さなかったのだから。