セカンドマリッジリング ―After story—
「ええ、今日は私も同行させてもらいました。お義兄さんの事も心配だったので……」
花那がそう答えると、真由莉はツンとしたまま彼女を押しどかすようにして二人の間に割り込んでくる。そのまま兄である颯真の腕に自分のそれを絡めるとグイグイと引っ張り出した。
「まあそんな事はどうだっていいわ。颯真兄さん、私の部屋でお茶でも飲みましょう? 美味しい茶葉が手に入ったの、今用意させるから」
「お、おい。真由莉……?」
懐いている妹相手なので強く出れないのか、颯真は困ったような声を出すが真由莉の言いなりだ。そんな真由莉は視線だけで花那に「貴女はついてこないで」と伝えてくる。
もちろん真由莉に反抗することは彼女には出来ず、花那は妹の部屋に連れて行かれる颯真の背中を見ているだけだった。
そのまま廊下に立っているわけにもいかない、だからと言ってこの家に花那が入れる場所などない。彼女は諦めてそのまま一人で玄関へと向かい靴を履いて出て行った。
広い庭は丁寧に手入れされており、春の植物も綺麗な花を咲かせている。ここからはあの家の中の暗さなど想像も出来ないのに……
車のキーを颯真から預かっていたのは運が良かった、花那は助手席のドアを開けて中へ乗り込むとそのまま背中を椅子に預けて瞳を閉じた。
今までの事、そして涼真がいなくなった事で変化するかもしれない颯真との未来について考えるために。