セカンドマリッジリング ―After story—
だが花那がそうして目を閉じていられたのは短い時間だった、すぐに助手席の窓がノックされて自分が呼ばれていた事に気付く。
車の外に立っていたのは焦ったような表情の颯真だった。先ほど彼に纏わりついていた妹の真由莉の姿は見えず、花那は少しだけホッとする。
「どうしたの、真由莉さんとお茶をしなくても大丈夫?」
助手席のドアを開けて花那が颯真に問いかける。
嫌味ではない、颯真の妹の真由莉がご機嫌を損ねると面倒になる事は花那も知っていた。それを気にして颯真が真由莉を相手に強く出ない事も。
それを理解しているからこそ、そのまま颯真から離れたのに彼は花那の傍へと戻ってきた。
「いいんだ、俺が大事にしなければいけないのは花那だ。真由莉の我儘に付き合って君を一人にするわけにはいかない」
「颯真さん、ありがとう。そう言ってもらえると、嬉しい……」
本当は心細かった、一人であの場所にいる事も出来ずこうやって車の中へと逃げてきた。それを颯真はすぐに探して見つけてくれたのだ。
斗真の花那を見る視線は厳しく冷たかった、颯真の母は彼女をいない者として扱おうとする。そして妹の真由莉は兄の妻である花那を嫌悪し見下していた。
とてもじゃないが、花那にあの家の中で心が休まる瞬間などあるわけがない。