セカンドマリッジリング ―After story—


「帰ろう、兄さんの事も聞けたしこれ以上長居する必要は無い。俺もこの後はゆっくり花那(かな)に癒されたいんだ」

 颯真(そうま)が花那に向ける表情は優しく穏やかだ、結婚当初とはまるで別人だが前よりもずっといいと花那は思う。本当はこんなに愛情深い人だと、きっと颯真の家族は知りもしないのだろう。
 父の斗真(とうま)のように家族を駒のようにしか考えない親に育てられて、颯真は愛することもろくに知らなかった。それでも彼は花那の存在に癒され心を開いて、そして分かりあう努力をしてくれた。

「ええ、私も颯真さんに甘えたい気分だったの。二人の家に帰りましょう」

 颯真は運転席に乗り込むと、エンジンをかけてゆっくり車を発進させる。チラリと深澤(ふかさわ)の家に視線を移したが、すぐに前を向き直しその後は後ろを見ることはなかった。
 そんな颯真の様子を花那は気付きながらも黙って見ていることしか出来ない。彼なりに家族の事を何とかしたい、そう言う気持ちがあるのだろうと理解しても颯真の役に立つ術を見つけられないでいた。

 高速を走って一時間もすれば、二人の家へと帰りつく。途中スーパーによって簡単な食材や出来合いの料理を購入して、颯真と花那は遅い昼食を済ませた。
 それでもやはり二人の家は落ち着くことが出来る、二人は交代でシャワーを済ませソファーで寛ぎ始める。花那は夫の胸にすり寄るように甘え、颯真はそんな妻の綺麗な髪を梳く様にして癒された。
 こんな穏やかな時間が、二人にとっては宝物のように大事だった。


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