セカンドマリッジリング ―After story—
それから二週間、涼真について何の進展もないまま時間だけが過ぎて行った。颯真が送ったメッセージが既読になる事はなく、警察から両親に何かしらの連絡が来ることもなかった。
最初は一日に一~二通だった颯真の母からのメッセージも十日を過ぎたあたりからは、日に十通を超えるようになっていた。そのたびに颯真が深いため息をつくのを花那は黙って見ていることしか出来ない。
メッセージの内容など聞かなくても分かる、きっと颯真は父親に深澤コーポレーションに来るように言われているのだろう。
「颯真さん、大丈夫……?」
こんな事しか言えない、花那はそんな自分の無力さが悔しくて堪らない。
颯真が今の仕事にやりがいを感じていて、花那もそんな夫の支えでありたい。そんなささやかな二人の夢さえも颯真の父は何てことない顔をして奪おうとする。
「大丈夫だ、俺はここで花那と暮らす。医師を止めるつもりもないし、兄さんの居場所を奪うつもりもない」
颯真に意思はハッキリしている。彼が守りたいものは花那との今の生活であって、父の経営する深澤コーポレーションは二の次だ。それでも……斗真の会社にはたくさんの従業員がいて何も知らない顔をし続けるのは難しい。
それは花那も薄々分かっていた事で、いつかまたきちんと颯真の両親と話さなければいけない時が来る。彼女はその覚悟をしなければならなかった。