セカンドマリッジリング ―After story—
「颯真兄さん、いますよね? 呼んでもらえますか、真由莉が会いに来たと」
真由莉の訪問はいきなりだった、どこから知ったのか颯真の休みにきちんと合わせてやってきたのだ。まさか真由莉が来るとは思いもしなかった花那が驚いていても、彼女はそんなことは気にも留めず兄を呼べという。
まだ朝早い時間で、颯真は今はベッドの中だ。仕事で疲れている彼を無理に起こすのは気が引けて花那はやんわりと断ろうとする。
「颯真さんはまだ寝ているの、申し訳ないけれど午後に出直してもらえないかしら?」
「なぜ? 私が来たと言えば颯真兄さんは起きるはずだわ。ああ、もしかして花那さんは私を兄さんと会わせたくないのかしら? 義妹にヤキモチなんてみっともないわね」
真由莉はそうやって花那を馬鹿にしたように笑う。花那が颯真と真由莉を合わせたくないのは本音だった、だがそれはヤキモチなどではない。
義妹の我儘に付き合わされる颯真の事を考えると、花那も真由莉の事を歓迎出来るわけがない。そんな事など関係ないと、真由莉は玄関で通せんぼの様な態勢をとる花那を押しのけて強引に中へ上がり込んだ。
「待って、真由莉さん。颯真さんは本当に疲れて休んでるの」
「颯真兄さんが疲れてるのは花那さんの所為でしょう? 貴女のサポートが足りないから、そんな事になるに決まってるもの」
一方的にそう言い切って真由莉は迷うことなく夫婦の寝室へと向かい、そのまま乱暴にドアを開けた。そんな彼女の行動に花那は唖然とするしかない。今まで付き合いが薄かったとはいえ、義妹がここまで自分勝手な女性だとは思っていなかったのだから。