セカンドマリッジリング ―After story—
「颯真兄さん、起きてよ! 今日は一緒にモーニングにでも行きたいと思って誘いに来たの」
「ちょっと、真由莉さん。困るわ、そんな勝手に……!」
花那がそう言って真由莉を止めようとするが、彼女は聞く耳を持たずベッドで眠っていた颯真を揺さぶって起こしてしまう。寝ぼけた颯真が花那と勘違いして伸ばした手を当然のように真由莉が握ってしまう。
そんな真由莉の勝ち誇ったような笑みに花那の方がゾッとして、その場にいるのすら怖いと感じてしまった。
「……まゆ、り? どうしてお前がここに?」
目が覚めた颯真がそこにいるはずの無い妹の存在に驚き、少し乱暴に彼女に握られていた手を振り払う。兄である颯真のそんな態度が不満だったのか、真由莉は頬を膨らませ起き上がった颯真の胸を叩いて見せた。
まるで恋人が甘えるみたいなその様子に、花那は真由莉が何を考えているのかと不安になる。どう考えても自分に見せつけて嫉妬させようとしてるとしか思えない。
「そんなの兄さんに会いに来たに決まっているでしょう? この前だってお茶を準備したのに飲んでくれなかったじゃない」
「ここに来ていいと俺は言ってないはずだ、何も用が無いのならすぐに帰って欲しい」
意外にも颯真の対応は冷たく厳しいものだった、甘えた態度の真由莉を突き放す様子に花那の方が驚いてしまうほど。
ここは自分と花那の家、たとえ妹であっても勝手に入って欲しくはない。颯真にとってそれは譲れない一線だったのかもしれない。