セカンドマリッジリング ―After story—
「どうしてそんなこと言うの? 前は好きに入っていいと言ってくれたじゃない、もしかして……それって花那さんのせい?」
後ろを振り向いて花那を見つめる真由莉の瞳は酷く冷たかった。彼女にとって都合の悪い事は全て花那が原因だと言わんばかりに。
真由莉が颯真に懐いているのは知っていた、だが今まではこうして家にまで押しかけてくることはなく一定の距離を保っていたように感じる。それなのに、今になって何故なのか?
「違う、花那は関係ない。俺が、彼女との生活の中に誰かを入れたくないだけだ。それが妹のお前であっても」
「何よ、それ? おかしいわ、颯真兄さんはそうやって花那さんを庇ったりしなかった。そんなの全然兄さんらしくない!」
夫が妻を庇う事の何がいけないのか、普通なら当たり前のことを真由莉は納得がいかないと言う。彼女にとっての颯真は、妻にも何の感情も持たない冷たい人間。そうでなくてはならないとでも言うように。
「俺は俺だよ、こうして花那を守っているのも、彼女が一番大切なのも全て今の俺が望む事だ」
だがそんな真由莉に颯真は兄としての態度を崩さず、はっきりとした口調で今の自分の感情を話す。みるみるうちに真由莉の可愛らしい顔が醜く歪んでいくのが花那にも分かった。
……憎悪、その真由莉の強い感情が真っ直ぐに花那へと向けられる。