セカンドマリッジリング ―After story—
「嘘、美味しそう……これを颯真さんが?」
颯真がトレーに乗せて持ってきたのはハムと卵のサンドイッチ、具だくさんのミネストローネだった。その出来上がりを見れば、彼が料理をする事に慣れていることが嫌でも分かる。
深澤コーポレーションのという大企業の社長の次男として育った颯真が、こんなにこんなに料理上手だなんて五年一緒に暮らしていた花那も想像出来なかった。
「さあ、温かいうちに食べるといい。味の保証は出来ないけれど」
颯真はそういうが、ミネストローネからはいい匂いがするしサンドイッチもとても美味しそうだ。花那のお腹もグウッと音を立ててその料理を欲しがっている。
「いただきます。でも、颯真さんって料理男子だったのね。全然知らなかったわ」
花那はミネストローネをスプーンで掬い、ふうふうと冷ましながらそう聞いた。しかし不思議だ、彼は花那の前では一度もキッチン立つことなどなかったのに。
てっきり家政婦も調理などのために呼んでいるのだとばかり思っていた。
「いや、そういうわけじゃない。ただ……自分の分は自分で料理をしなければいけない、それが俺にとっては普通の事だったから」
「……え? それってどういう事?」
大企業の御曹司である彼が自分で料理をしなければならない? 意外な言葉に花那は戸惑いその先を知りたがるが、颯真はその先を話す事は無く花那のスプーンを奪い取ってスープを彼女の口に運んでくる。