セカンドマリッジリング ―After story—
たとえそれが親の残した負債だったとしても、花那が借金を背負っていたことは変えようがない。そのために颯真からの契約話にのったことも。
真由莉の言う通り、愛の無い結婚に耐えられず一度は颯真から離れようとしたのだ。それでもこうして一緒に居れるのはお互いがそう望んだから、それを夫の妹とはいえとやかく言われたくはない。
「真由莉さん、もし貴女が私を颯真さんのお金目当てだと思うのならすぐにでも働きに出るわ。自分に必要なお金くらい自分でどうにかする、それで納得してくれるのかしら?」
「そういう事じゃないわ、散々兄さんを利用しておいて開き直りなの? 花那さんが稼げるお金なんてたかが知れているじゃない! 贅沢を覚えたくせにそんな事出来るわけない」
花那は颯真と生活している間に贅沢を望んだことなど一度もない、家事も仕事も颯真が止めていたから出来なかっただけで。今は積極的に家事も就職活動も行っている、それを真由莉は知らないのだ。
元々颯真は恵まれた生活をしていたわりに、そう贅沢を好まなかった。だからこそこうして深澤の家を出ても彼は何の援助も受けず暮らしていけているのだから。
「真由莉、いい加減にしないか。花那に借金があろうと贅沢を好もうと、俺達は深澤の家に迷惑をかけていないはずだ。お前が口出すことじゃない、それは分かっているんじゃないのか?」
花那に食って掛かりそうな真由莉の腕を引いて、彼女から引き離す。このままでは妹が何をしでかすか分からない、早く追い出さなくてはと颯真は考えた。