セカンドマリッジリング ―After story—


「ふふふ、名賀(なが)さんと颯真(そうま)さんはとても仲良しなんですね。私の名前は花那(かな)です、花に那須高原の那の字でかな。よろしくお願いします」

 深々と頭を下げる花那に、名賀は笑顔で右手を差し出した。颯真は彼の事をいい人だと言っていた、花那は迷わず差し出された手を握る。自分の夫よりも大きな手に驚きながらも、その手の温もりと朗らかな笑顔に名賀は信頼できる人だと感じていた。

「花那さん、名前も綺麗ですね。もちろんです、せっかくだから颯真の学生時代の話をたくさん話して聞かせて上げますよ!」
「本当ですか! 是非聞かせていただきたいです、私はまだ颯真さんについて知らないことだらけで」

 契約結婚の期間は長くても、お互いが向き合ってからの時間はそう長くない。想い合い心を繋げることは出来たが、まだ相手の事を知らなすぎる。もっと色んな颯真の事を教えてもらいたいと花那は思っていたのだ。

「いいですよ、まずは颯真が入学して間もなかった頃……」
「ちょっと、先輩! その話はもう忘れるって約束でしたよね、その代わりに俺は新入生の女子の連絡先を聞いて……!」

 慌てた様子で颯真が名賀の口を塞ぐ、余程花那に知られたくない内容なのかその表情は必死だ。そんな態度をとられると余計に知りたくなるのだが、それは叶わなかった。

「へえ? 新入生の女子の連絡先を……ねえ? それは初耳だったわ、瑛太(えいた)君」


< 38 / 111 >

この作品をシェア

pagetop