セカンドマリッジリング ―After story—
「しばらくの間、ここで生活しようと思っている。花那さえ嫌じゃなければ、の話だけど」
「ここで? でも、それじゃあ颯真さんが仕事に通うのが大変になってしまうわ」
今まで住んでいた場所からは颯真の仕事先はそう遠くはなかったが、ここから通勤するとなれば今までの倍以上の時間がかかるはず。彼の仕事の大変さを理解している花那は、これ以上颯真の負担を増やしたくはなかった。
「それくらいどうって事はないよ。花那を中途半端な場所に残して毎日不安でいるよりずっといい」
「それは、そうかもしれないけれど……」
颯真の気遣いは嬉しい、もちろんあの義両親や彼の妹の事を考えれば安全な場所にいたいのも本音だった。それでも素直にうなずけないのは、自分ばかりが颯真の負担になっているような気がしたから。花那が夫の颯真にしてやれることが見つけられず、少しだけ焦りもあったのかもしれない。
「嬉しいけど、やっぱり私……」
「あら? ちょっと待って、誰もタダで泊めてあげるなんていってないわよ? 花那さんには二人の宿泊代分、このペンションでしーっかりお手伝いをしてもらう予定なんだから」
美海の言葉にぎょっとする颯真だったが、彼女は花那が断れないよう素早く畳み掛ける。
「今さら無理なんて言わないでよね? もう花那さんが働いてくれる分、予約を多くいれちゃったんだから」
「み、美海さん。いつの間に……」
戸惑う颯真に美海は余裕の笑みを見せる、少なくとももう花那がこの話を断ること出来そうになかった。