セカンドマリッジリング ―After story—
束の間の安らぎと不安に
「最初から全部分かっていたんでしょう? 颯真さんは私があんな風に言われたら断れないって」
あれから花那は美海に言われるまま、宿泊客への夕食作りや片付け等を手伝っていた。明日からの颯真の仕事のことも気になってはいたがそれを話す暇もなく、ようやく自分達の食事を終えて一息ついたところだった。
颯真は花那が心配し自宅に戻るというのを予想して、彼女をここに連れてきたのだ。花那が思っているより颯真が彼女の事を理解していることが、嬉しくもあり少し悔しい気持ちにもなる。
――私はまだ、颯真さんのことで分からないことがたくさんあるのに。彼を思う気持ちは負けてないつもりなのに、まだまだ相手を知る努力が足りないのかも。
「花那はわりと分かりやすいからな。こうでもしないと俺の心配ばかりして、俺のいうことは聞いてくれないだろう?」
「だからって、こんな強引な……」
颯真の言うことは間違っていない、花那は間違いなく自分よりも夫を優先して物事を考えてしまうだろう。それは嬉しいことでもあるが、颯真も同じように花那の安全を一番に考えたかった。
「先輩と美海さんは昔からああなんだ。まあ……もし花那がどうしても嫌だというのなら、これから別の場所に連れて行ってもいいけど?」
「……ズルい言い方ね、名賀さんも美海さんもいい人だから嫌なわけないのに」
今日の颯真は随分意地悪な言い方をする。花那の事を思ってくれている颯真はもちろん名賀や美海のことも嫌いだなんて思うわけないとわかっているだろうに。