セカンドマリッジリング ―After story—
「自覚はある、姑息な手を使って君をこの場所に留めようとしてるってこと。それでも花那の安全が守られれば、その方が良いと思ったんだ」
「颯真さんは私が思ってたよりもずっと、自分の意見を押し通すタイプだったのね」
そう皮肉を言ってみるが、颯真はそれを嫌な顔一つせずに聞いている。花那が本心でそう言っているのではないと、彼はちゃんと分かっているから。
人のためにばかりその人生を捧げてきた花那は、誰かに甘やかされることに慣れていない。いつもは素直に頬を染めてはにかむような笑顔を見せるが、時々こうやって照れ隠しで拗ねたような態度をとる。
……そんな妻も可愛らしいと、颯真は心の中でこっそり思っているのだが。
「どうだろうな、今までずっと両親のために物分かりの良い息子を演じてきた。でも君の前ならば、そうやって猫を被らずに素直な自分でいられるから」
「……そんな風に言われたら、もう文句言えなくなるじゃない」
自分の前でだけ見せてくれる、颯真の素直な態度に花那はまた胸の高鳴りを感じてしまう。付き合いたての恋人のような甘い空気が二人を包んでいるようにさえ思えてくる。
「……おいで、花那」
ソファーに座ったままの颯真が、両手を広げて花那を誘ってくる。優しく、どこか色気を含むその声に花那は抗うことが出来ず彼の腕の中へと収まった。
こうしてピッタリとくっついている時間が、今は何より幸せだと……そう二人は感じていた。