セカンドマリッジリング ―After story—


涼真(りょうま)さんは大丈夫なのかしら? きっと余程の理由がなければ、あんな風に出ていったりしないと思うのだけど……」

 花那(かな)颯真(そうま)から何度も涼真は真面目な兄だと聞いていた。彼女が会ったのは数回だが、彼は他の家族と違って花那にも優しく接してくれた。
 そんな涼真が何も言わず、行方不明になったと聞けば心配せずにはいられない。

「そう心配することはない。両親には既読も付かないと言ったが、あれから俺のメッセージだけは読まれたようだった。もしかしたら近いうちに連絡がとれるかもしれない」
「……変な事件に巻き込まれてたり、何て事はないわよね?」

 既読マークのついたメッセージ画面を見せて、颯真は花那を安心させようとする。それを確認して少しホッとした表情を彼女は見せたが、それでもまだ不安は拭いきれないようだ。自分の兄を心配する花那の優しさを愛しく思いながら、その様子に少し嫉妬する自分自身を颯真は苦笑いした。

「兄さんは真面目でお人好しだが、それだけの人じゃない。武道まで習っていたし、そう簡単に他人にどうにか出来るような人ではないから」
「そう、なのね? あんなに温厚そうなのに意外だわ」

 花那と会っているときの涼真はいつも穏やかな笑みを浮かべていることばかりだった。見た目も優男風で武道を習っていたといわれてもピンと来ない。

「信じてないかもしれないが、学生時代には県の大会で優勝もしてるんだ。俺なんて真面目に向かっていったって相手にもされない、兄さんはそういう人なんだよ」

 過去に立ち向かっていったことがあるのか、颯真は懐かしそうに目を細めて笑う。その様子を見て、やっと花那も涼真が無事だろうと思うことが出来た。


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