セカンドマリッジリング ―After story—
「ええ、颯真さんがそういうのならきっと涼真さんは大丈夫ね」
「すぐに見つかる、とはまだ言えないけれどさ。きっと探し出すのにそう時間はかからないはずだ、もしかしたら兄さんの方から連絡してくる可能性だってある」
自信のあるその言い方に、花那も笑みを浮かべて頷いて見せた。お互いの笑顔が何より安心できるものになって、相手と誰より信頼する関係でいられることが何より嬉しい。
花那は背中に伝わってくる颯真の体温を感じながら、不安ばかりにならないようこれから自分に出来ることを考えていた。
いつの間にか眠ってしまった花那をベッドへと運び、颯真は音をたてないように部屋を出ていく。彼にはまだやることがある、名賀と美海に自分が仕事で不在にする間の花那のことについてだ。
慎重な彼女が自ら危険なことをするとは思えないが、颯真の両親がどんな手を使って彼女に接触するか分からない。
……ここなら安全だと思うが、それでも用心するに越したことはない。
宿泊客の休憩室をかねた広いリビングには、まだ名賀と美海がコーヒカップを手に話をしていた。まるで颯真が二人に話をしに来るのを待っているかのように。
勘のいい人達だ、と颯真は思う。昔から二人は自分がなにか話をしたい時は、それを当然のように待ってくれていた。急かすこともなく、颯真の行動を黙って見守るように。
「明日からの花那の事で、きちんと相談してもいいですか?」
「……当然だろ、きちんと話してもらわなきゃ協力だって出来ないからな」
相変わらず頼もしい、この二人の傍にいれば花那もきっと安心するはず。そう思い颯真は二人と向かい合う席に座り、話を始めた。