セカンドマリッジリング ―After story—
「……ん」
カーテンから差し込む朝日を眩しく感じて、花那はゆっくりと瞼をひらく。まだ覚醒しきれない意識のままボーッとしていると、そんな彼女の髪を指で颯真が愛しそうに見つめてくる。
寝顔をじっと見られていたのだと気付いた花那が、夫から焦って顔を隠そうとする。見られるのが嫌なわけではないが、颯真の優しげな眼差しにどうしても照れてしまうのだ。
「おはよう、花那」
「……おはよう、颯真さん」
そんな花那の態度に怒ることなく、背を向けた彼女を後ろから抱き締め囁いてくる。五年間、契約夫婦として生活していた頃からは考えられないほどの彼の甘さに、思いが通じあった今でも花那は戸惑うばかりだ。
「……颯真さん、仕事にいく準備はしなくていいの?」
「そうだな、そろそろ用意しないと」
颯真に抱き締められるのは嬉しいが、のんびりして彼を仕事に遅刻させるわけにはいかない。そう思って急かしているのに、颯真はなかなか花那から離れようとしない。いったいどういうつもりなのだろうか?
「……離れたくないな。一分、いや一秒でも多く花那の傍にいたい」
「そ、颯真さん? いったいどうしたの」
甘えるように花那の背中に顔を擦り寄せる颯真、そんな彼の言動に花那の声は焦りからか上擦っている。