セカンドマリッジリング ―After story—
「よし、じゃあちょっと洗い物を済ませてくるから……」
颯真が食器の乗ったトレーを持って立ち上がると、ヘッドボードに置いたままだった彼のスマホの着信音が鳴る。いつも花那が聴くのとは違うメロディーに少しだけ胸騒ぎを覚えたような気がした。
気になって颯真を見れば彼は少し硬い表情をして、トレーを机に置くとスマホを手に取り画面を確認していた。
「どうしたの、颯真さん?」
「ああ、ちょっと電話に出るけど気にしないで。無視すると面倒な人だから……」
颯真の言葉を聞いて花那は大人しくベッドへと潜り込むことにする。颯真はそんな彼女から少し離れた場所で通話ボタンをタップしスマホを耳にあてた。
「もしもし、颯真ですけど。こんな朝早くに何か用があったんですか?」
普段の颯真より堅苦しい言葉遣いを聞いて、花那は勝手に彼の職場の関係者なのかと思っていたのだが……
「え? いいえ、迷惑というわけではないですが。そんな事を話すために電話をしたわけではないですよね、母さん」
その言葉に花那の方がドキッとしてしまう。まだ数回しか顔を合わせたことのない颯真の母は、息子の妻である花那に対してあまり良い感情を持っていない。
それは花那自身が一番よく分かっている事だった。それでも普段は颯真がなるべく関わらなくていいように気を使ってくれてはいるのだが。