セカンドマリッジリング ―After story—
「へえ、そんなことがあったのか。花那に一品料理を頼むなんて、先輩らしいやり方だな」
「もう、笑い事じゃないのよ。お客さんの口に合わなかったらどうしようって凄く緊張したんだから」
仕事から帰りシャワーを済ませて夕食を前にした颯真は、そんな花那の話を聞いて楽しそうに笑う。彼の目の前には花那が考えて作った蕪のポトフもちゃんと並べてある。
「心配ない、花那の作ったものは毎日食べてるけれどどれも美味しい。もし君の料理に文句を言うやつがいれば俺がじっくり話を聞かせてもらいたいね」
「そんな、メチャクチャなことを言って。もう……」
迷わず一番に口に運ぶのが、花那の作った蕪のポトフ。言わなくても気づいてくれるようになった、そんな夫の変化が嬉しい。
何度料理を作っても見向きもしてくれなかった頃は辛かったが、それでも今が幸せならそれでいい。
「ああ、やっぱり花那の料理が一番だな。先輩たちの作ってくれる食事も美味しいが、君のを食べている時間が何より癒される」
「そんなに煽てても何も出ないわよ?」
「何もいらないよ、花那さえ傍にいれくれれば……他には何も」
冗談で言ったのにそう返されては何も言えなくなる。じわじわと熱くなる頬をバレないように颯真から隠そうとするが、とっくに気付いているのか彼は嬉しそうに口角をあげて花那を見つめていた。
何となく居心地が悪くなって花那は颯真に問いかける、出来れば避けたかった話題だがこの際仕方ないと思って。
「それで、お義父さんとお義母さん……それに真由莉さんの様子はどう? なにか言われたりはしていない?」