セカンドマリッジリング ―After story—
「分かってる、花那のその気持ちは嬉しいし心強いと思ってる。だが……あの人たちには君が思っているような常識は通用しないんだ」
「それは、そうかもしれないけれど」
食い下がる花那だったが颯真も折れる気はないらしい、二人のやりとりは結局深夜まで続いてしまった。それでもベッドの上では二人仲良く寄り添って眠る、それが今の二人の自然な姿だった。
「やあだ、それで寝不足なの? もう、私はてっきり……!」
「てっきりって? 美海さん、一体どんな想像を……まさか、ち、違いますよ! そんなんじゃ」
颯真が仕事へと出た後、寝不足の花那に声をかけてきた美海のにやけた表情に彼女は慌てて誤解を解こうとする。しかしムキになって否定すればするほど怪しまれ、結局は名賀が呆れて止めに入るまで美海の揶揄いは続いた。
朝からドッと疲れを感じていると名賀がさりげなくエナジードリンクを差し入れたりもしてくれる、フォローの上手い夫婦だと花那は羨ましく思っていた。
この二人のようにお互いが相手をフォローできるような関係が理想だ、でも颯真はそうではないのだろうか?
気持ちは通じても、育った環境の違いからかどうしてもお互いに譲れないところが出てくる。彼女はそれを痛感していた。
そんな時――
「え? 予約にないお客さんって……急に言われても無理よ。ええ、それは分かるけど準備がとても……」
夕食の下拵えに入ろうかと言う時間、美海が焦ったような様子でスマホで話をしていることに気づいた。どうやら宿泊客のことで何か問題があったのかもしれない。
「どうしたんですか、美海さん?」
「あ、花那さん。あの、今ちょっとね……」
困った表情の美海を見てすぐに花那は自分にできる事はないかと、彼女に訊ねずにはいられなくなる。しっかり者の花那にはそんな様子を放っておくことなど出来るわけがなかった。