セカンドマリッジリング ―After story—
「やっぱり食材が足りないわ、急いで買いに行かないと……」
「それなら私が行きます、美海さんには貴女にしかできない仕事をしてもらわなきゃいけませんから!」
花那が出来ることなど限られている、それならば雑用などは自分が進んでした方がいい。そう考えた彼女は美海から馴染みの店の場所と、必要な食材のリストを貰って外に出る。ペンションの倉庫に置いてあった自転車に跨ると、もう一度預かった地図を確認し走り出した。
「確か……この辺りのはずなんだけど」
山の中に建てられたペンションから商店街までは少し距離があった。自転車を降りて駐輪場に停めると、そこそこ賑わう商店街の店を急ぎ足で確認していく。
他にやることはたくさんある、買い物だけにあまり時間をかけるわけにはいかない。そう思った花那だが、思わぬところで足止めを食らうことになる。
「あの、この場所がどこにあるか教えて欲しいんですけど……」
声をかけてきたのは中学生くらいの少年だった。大きなカバンと小さなメモを持って、落ち着かなさそうな表情をしている。迷子……という年ではないだろうが、困っている相手を放っておけるような性格ではない。
「そのメモに住所が書いてあるの? ちょっと見せてもらえる?」
タイミングよく花那は美海からこの周辺の地図を預かっている、通行人の邪魔にならないように端に移動して記載された住所を地図から探し始める。
時間を気にする花那は、それを見ていた少年の手が小さく震えている事にも気付かずに。