セカンドマリッジリング ―After story—
『貴方は騙されてるのよ、颯真。花那さんはこの深澤家の財産が目的に決まってる、ちゃんとした良家のお嬢さんが相手ならばこんな心配もしなくてよかったのに。ううっ……』
人の話を全く聞かないところは、昔からちっとも変わっていないと颯真はうんざりする。何かといえば人を家柄だけで判断しようとする、そんな母の考え方は一生理解できそうにない。
キチンと花那という女性に目を向ければ、彼女がそんなお金目当てなんかではないことがすぐ分かるはずなのだ。いつだって花那は必要以上の贅沢は望まなかった、颯真としてはもっと欲張りになってほしいと思うほどに。
「そんな泣き真似はもう十分だ、それよりもさっさと要件を話してくれませんか? 早く帰って花那の顔が見たいので」
『なら、ウチに来なさい。ちょうど花那さんがいらしてるのよ』
当然のようにそう話す母親に、颯真の感情が一気に怒りへと切り替わる。花那には余計な手を出さないように言ったのに、平気でそれをやるのが信じられない。
その性格や立場上、颯真の両親に逆らえない花那を利用して彼に言うことを聞かせようというのだろうか?
「花那を……無理やり深澤の家に連れて行ったんですか? 一体なんのために」
『無理やりなんてするわけないでしょ、ちゃんと花那さんが自分から車に乗り込んできたのよ? そうよね、花那さん」
花那が望んでそうするわけがない、きっと彼女がそうしなければならないような状況を準備していたに違いない。颯真は怒鳴りそうになる自分を必死で抑えるが、そのために握りしめた拳は痛いほどだった。