セカンドマリッジリング ―After story—
「何が……望みなんです? 花那まで巻き込んで、俺にいうことを聞かせて」
答えなど聞かなくても分かっている。それでも尋ねたのは、母親にも良心があるかもしれないと颯真が勝手に期待したからかもしれない。
そんなのはずっと前に諦めたはずなのに、それでも……
『人聞きの悪いことを言わないでちょうだい? 貴方が私たちの話を聞かないから、仕方なく花那さんにも協力してもらっているのよ。彼女はこのくらいの事でしか深澤の家の役に立てないんだから』
「母さん!」
無駄だ、何を言ってもこの親に颯真の願いは通じない。彼にとって一番大切な女性を、両親は道具や物程度にしか考えてはいない。花那自身がどれだけ素晴らしい人かも、知る必要性など感じてはいないのだろう。
『早くいらっしゃい、そうじゃなきゃ花那さんの相手をしてくれている真由莉に悪いでしょう?』
「……真由莉に⁉︎ 冗談じゃない、どうしてそんな事をするんだ。真由莉が花那にいい感情を持っていないことは分かっているだろう?」
颯真の母は陰湿な行動が多いが、本人に危害を加えたりまではしない。だが……妹の真由莉はそうではない、敵だと認識した相手にはどこまでも攻撃的だ。それは母である彼女も十分理解しているはずなのに。
『真由莉が花那さんとお茶がしたいと言ったのよ、あの子が義理姉の花那さんと仲良くしようと頑張っているのに、止める理由なんてないわ。そうでしょう?』
「そんな事、思ってもないくせに……! とにかく、今すぐ花那を迎えに行きますから」
その言葉に満足したのか、颯真の母は笑いながら通話を切った。真由莉に捕まり、花那が無事か不安な気持ちで彼は車を目的地まで走らせた。