セカンドマリッジリング ―After story—
真由莉はカッとなり一瞬だけ怒りの表情を浮かべたが、すぐに自分の方が優位な立場であることを思い出したのか余裕を取り戻し微笑んだ。
花那だってわざわざ真由莉を怒らせたいわけではない。それでも何もかもが自分達の思い通りになると思っている彼女たちの乱暴な考え方に頷くことなど出来るわけもなく。
「そう、花那さんは颯真兄さんのことを特別に想ってると言いたいのね? ならば尚更私たちの話に耳を傾けるべきではないのかしら。夫を想うからこそ身を引くべき、そんな場合もあると思わない?」
「……それはどういう、意味でしょうか?」
意味深な言い方を好むのは真由莉も義母とそう変わらないようだ。わざと曖昧に話して相手を不安にさせる、それが楽しくて仕方ないらしい。かなり悪趣味だと思いつつ、緊張からか花那は息苦しさと吐き気を感じていた。
「涼真兄さんが戻らなければ颯真兄さんはいずれ社長になるわ。どんなに反抗したってそれは深澤の人間である以上、決められてることなの。でも……花那さんはそうじゃないでしょう?」
「……」
真由莉の言いたいことを話させるために、あえて口を出さずに続きを待った。そんな様子の花那に気を良くしたのか、真由莉は愉快そうにクスクスと笑う。
「颯真兄さんは社長になってもきっと大丈夫、この深澤家で育った人だもの。だけど花那さんが社長夫人にふさわしいかどうかは別なのよ、自分でも分かってるんじゃないかしら?」
「社長夫人、ですか。私はそんなのには興味なんて……」
その言葉を待っていましたとばかりに真由莉は口角をあげる。そのまま花那の傍に寄ると、その耳に囁くようにこう言ったのだ。
「なければ尚更論外ね、そんな人が社長になる颯真兄さんを支えられるとは思えない。兄さんを支えてくれる、家柄も教養もある女性にその妻の座を譲るべきだと思いませんか……?」
「……譲る? 颯真さんの妻の座を?」