セカンドマリッジリング ―After story—

「やはりマトモな両親に育てられてない方には伝わらないのね、颯真(そうま)兄さんの結婚相手がどれだけ大切なことかって事が」
「……それは、私の両親の事を言ってるんですか?」

 確かに花那(かな)の父親は借金を残してしまったし、母は病気がちで娘である彼女の負担も少なくはなかったけれど……それでも、花那にとっては二人は大事な存在でもあったのだ。それを、自分達のことを何も知らない真由莉(まゆり)に貶される理由は見つからない。
 腹の中が一瞬で熱くなるの感じながらも、花那はなんとか落ち着いた声でそう聞き返えす。

「そうに決まってるでしょう? 借金まみれでそれを娘に押し付けるような父親と、寝込んでばかりの役立たずな母親。そんな人達が子供にちゃんとした教育や躾をできるとは思えないもの」

 花那の静かな怒りを感じ取ったのか、真由莉は気分が良さげに言葉を続ける。自分の両親のことについて調べられていることくらい花那だって分かっていたが、こうして見下されるのは違うと思った。
 特に、それが自分ではなく……大事な家族のことであれば、なおさら。

「謝ってください、父と母に」
「はあ? 貴女、誰に何を言ってるのか分かってるの。私は深澤(ふかさわ)家の……」
「そんなのどうだっていい。私の事なら何を言っても構いませんが、父と母を悪く言ったことは許せない。二人に、謝ってください」

 今までにみたことのないような怒りの表情の花那に一瞬だけ真由莉はたじろぐが、すぐに普段の調子を取り戻し自分の方が立場が上なのだと見せつけるような態度をとる。
 真由莉にとって花那は兄の妻ではなく、彼女や両親にとってただただ邪魔な存在でしかないのだから。


< 66 / 111 >

この作品をシェア

pagetop