セカンドマリッジリング ―After story—
「そのままの意味よ、血の繋がった本当の家族と形式だけのお飾りの妻のどちらが兄さんにとって大切な存在なのかっていうね?」
お飾りの妻……確かにすこし前まではそうだったが今の花那は違う。それは二人の仲睦まじい様子を見たはずの真由莉だって分かっているはずなのに、どうしても彼女は花那と颯真の関係が変わったことを認めたくないようである。
選ばれるのは自分だと、真由莉のその瞳には根拠のない自信が見てとれた。だが花那だって颯真が自分を信じてくれるはずだとちゃんと分かっている、気持ちが繋がってからの時間は短くても……今の自分達はお互いを理解し合う努力をしてきたから。
「颯真さんが信じるのは、私の言葉のはずです。絶対に……!」
「お金目当ての貧乏人なんかが、調子にっ……乗らないで!!」
どうやっても自分の意思を曲げない強い花那に、真由莉は激怒し目を吊り上げた。感情的になった方が不利なことを分かっていても、今まで我儘放題で育てられてきた真由莉は堪え性がない。どうやら隙を見せない花那の様子や言動に焦れてしまったのだろう。
怒りを隠さない真由莉が感情に任せ、その細い腕を上げると……
「あなた、なんかっ!!」
「!?」
真由莉の手が花那に向かって振り下ろされる瞬間、身を固くして衝撃に耐えようと彼女は目を固く閉じた。自分が真由莉に手を上げてもなかった事にされるだろうが、逆ならば颯真の邪魔にはならなくて済む。それだけを考えて……
だが、いつまで待っても花那に真由莉の攻撃が当たる気配はない。不思議に思ってゆっくりと瞳を開ければ、自分を隠すように真由莉との間に立つスーツ姿。それが誰かなんて、確認しなくても分かる。花那は彼を此処まで来させてしまった罪悪感も覚えたが、自分を守ってくれるその背に嬉しさで涙が溢れ零れそうにもなった。