セカンドマリッジリング ―After story—
二人の意志の強さを胸に
「これはどういうことなんだ? 真由莉、説明してくれないか」
振り下ろされかけた真由莉の手首を颯真が掴んで、静かな口調で彼女にそう問いかけた。誰がどう見てもこの状況ならば真由莉が花那に手を上げようとしていたのは一目瞭然だろうが、そんな事を素直に認めるような彼女ではない。すぐにその表情を一変させ颯真を見上げると、今にも泣き出しそうに瞳を潤ませこう言ったのだ。
「ち、違うの! 先に酷いことを言ってきたのは花那さんの方なのよ。それも大好きな颯真兄さんの悪口で、私は我慢が出来なくてつい……」
「!?」
有りもしなかったことを、まるで本当の事のように話す真由莉は女優のようだと花那は思った。颯真を愛している花那が彼の悪口を言ったりしたことはない、それは二人が契約夫婦だった頃から一度だって。
それなのに真由莉は自分が颯真のために怒ったのだ、花那に手を上げかけたのだと平気な顔をして話す。信じられないような気持ちで言葉を失った花那を見て、真由莉が内心で笑みを浮かべているとも知らず。
「花那が俺の悪口を……? 本当にそうなのか?」
「そうよ! 私は花那さんには颯真兄さんのためにも、深澤家のお嫁さんとしてしっかりして欲しいとアドバイスしただけなのに! 彼女はそんな面倒なことは嫌だって、兄さんとの結婚はお金のためでしかないからって。そんなのあんまりでしょう?」