セカンドマリッジリング ―After story—
「どうしたの? お義兄さんが行方不明って……」
颯真の兄である涼真は、真面目な性格でそんな突拍子もない行動を取る人間では無かったはず。今電話がかかってきてそれを聞いたばかりなのに、花那はとても信じられない気持ちだった。
「兄が、三日前から家に帰ってこないと。どうやら仕事にも出てきていないらしい、あの人の性格からして帰れなければ母に連絡するはず。だが、それも無いそうだ」
真剣な表情でスマホを見つめる颯真、指を動かし画面をタップしているのは兄にメッセージを送るためなのだろう。花那はその様子を黙って見ていることにした。
三日、成人男性ならばそう心配することは無い事なのかもしれない。それでも颯真には真面目な兄が訳も無くそんな事をするとはとても思えなかった。
「何か事件に巻き込まれている、そういうのでなければいいんだが。両親は警察に捜索願を出すと言い始めている、どうしたものか……」
「そんな、でもお義兄さんにも何か理由があって帰っていないのかもしれないわ。もう少し返事を待った方が……」
花那だって心配じゃないというわけではない、だが涼真も一人の人間だし何か考えがあってのことかもしれないと思ったのだ。
もし誘拐などならば金銭の要求があってもおかしくない、もう彼がいなくなって三日も経っているのだから。