セカンドマリッジリング ―After story—
育った環境の所為もあってか、花那はわりと早くから自分の事はなんでも一人で何とかしてくるしかなかった。病気がちな母に無理はさせたくなかったし、父にはなるべくそんな母の傍にいて欲しかったから。
甘えることも我慢してきた彼女には、守ってくれる存在も無いようなものだったのに……今の花那にはこうして誰より傍で味方になってくれる夫がいる。
「私たち、血の繋がった家族よりも花那さんを選ぶというの? そんなのおかしいわよ、兄さん」
「そうよ、颯真。こんな事、お父さんが知ったら絶対に許さないはずよ」
颯真が何と言っても諦めたくないのか、真由莉が彼の腕を掴んで自分の方へと引き寄せようとする。そんな真由莉に加勢するように母親も花那から颯真を引き離そうとするのだが……
二人の手を振りほどいて、颯真は自分の腕の中に花那を抱き寄せた。今一番大切なのは彼女だというように。
「俺の考えは変わらない。会社を継ぐべきなのは自分ではなく兄さんだし、俺の妻は花那でなければ意味がないんだ」
「どうして⁉ 花那さんはどう思ってるのよ、兄さんと同じ気持ちだって本心で言えるの?」
苦し紛れの真由莉の言葉だったが、花那も覚悟を決めて二人に向き合った。曖昧な態度を見せればこれから先も何度も同じことが起こる、そう思い知らされたから。
「私も……夫と同じ思いです。颯真さんの傍にいたい、彼の支えになるのは私でありたい。この気持ちに嘘はありません」