セカンドマリッジリング ―After story—
「真由莉、お前も自分より大切だと思える誰かに出会えたらきっと分かる。いつまでも俺の後ばかりを追っていないで、自分のためにも周りを見れるようになるんだ」
「……そんな!」
どんな我儘でも聞いてくれていたはずの兄だったのに、今は真由莉から距離を置こうとしている。ずっと家族の中で颯真の一番でいられると思っていた彼女は大きなショックを受けていた。
いつかは他人の花那とは別れて深澤の家に戻ってくる、そう信じて疑わなかったのに。
「お前が俺を慕ってくれているのが嫌なわけじゃない、兄貴として出来ることはしてやりと思う。だけど、花那を愛する気持ちと家族への情は違う」
「嫌よ! 聞きたくないわ」
颯真の言葉を受け入れないといわんばかりに、真由莉は両手で耳を塞いで首を振る。
この状態ではこれ以上は何を言っても無駄なのかもしれない、そう思った花那は颯真の袖を軽く引っ張って彼の言葉の続きを止めさせた。
「どうしてそんなことばかり言うの? 真由莉はずっと颯真のことを一番に考えていたのよ、それなのに……」
「本当に俺のことを思うのなら、強引に妻を連れ去ったりしないはずです。こんな手を使っている時点でそれは愛情とは呼べない、そう思いませんか?」
そう返されて彼の母は押し黙る。家族としての愛情だ、この家のためだと言えば何もかも許されるわけではない。それは分かっているが、今まで反抗しなかった颯真だから多少は強引でも構わないと考えていたのだろう。