セカンドマリッジリング ―After story—
安らぎと癒しに包まれて
「ごめんなさい、颯真さん」
「どうして? 花那が謝る理由が俺には分からない」
ペンションへの帰り道、颯真の車の中で落ち着きを取り戻した花那が申し訳なさそうにそう言った。なるべく冷静でいるつもりだったが、感情的になってしまったかもしれないと反省していたのだ。
だが、もし感情的になったとしてもそれが悪い事だと颯真は思っていない。何故ならば……
「君が母や真由莉に対して言ったことに間違いなんて一つも無かった。むしろ花那がああいう風に思っていてくれたことが嬉しかったくらいだ」
「そう、なの? 私が余計なことを言えばお義母さんや真由莉さんを逆撫でしてしまうけど、颯真さんへの気持ちに嘘はつきたくなくて」
そう話してくれる妻が心底愛おしいと颯真は思う。ここが車の中でなければ優しく抱きしめたいほどに、心をときめかせる台詞だと。
花那と出会う前は、愛情や恋なんてずっと理解出来ないままで。そんなものは都合よく相手を縛り付けるだけの言葉なんだと思ってたのに、こんなにも自分を幸せにしてくれる感情だったなんて。
「二人に合わせて嘘をつかれるよりもずっといい。君にとっての一番が俺ならば、俺への気持ちにだけはずっと素直でいて欲しいから」
「そんなの……一番好きに決まってるでしょ」
颯真のストレートな言葉に、花那は少し照れながらも彼への気持ちを伝えてくる。ずいぶん遠回りしたからこそ、今こうして想い合って二人でいられることがどれだけ幸せかを互いに分かっているから。