セカンドマリッジリング ―After story—

「そうね、私がしっかりしてれば余計な心配をかけなくても済んだのに……」
花那(かな)のせいじゃない、今回のことで君を責める奴なんているわけがないだろう。それよりも俺の母や妹が本当にすまない」

 颯真(そうま)は申し訳なさそうに花那にこうやって何度も謝るが、彼女は自分に隙があったせいで周りに迷惑をかけたことを反省していた。
 ……正直どこにでもいる子供を使ってまで、義母達が自分を連れて行くなんて思いもしなかった。花那が無理やり車に乗せられているのを見てショックを受けていたあの少年は大丈夫だったかと心配にもなる。簡単に犯罪のような行為によその子供を巻き込んでしまう二人にも腹立ったし、自分さえ用心していれば防げたのではないかと何度も思ってしまうのだ。

「ありがとう、颯真さん。これからはもっと気をつけるわ」
「そうしてくれると助かる。俺もまさか二人がそこまでするとは思わなかったんだ、考えが甘かったんだな」

 確かに深澤(ふかさわ)家の次男として育てられ、それが少し普通の家庭よりも厳しいことは理解していた。自分が今、小児科医になれたのも祖母との約束や涼真(りょうま)の後押しがなければ不可能だっただろう。それでもこんな風に監視され、人質を取る形で言うことを聞かせようとするなんて思っても見なかったのだ。
 きっと今までは颯真の兄である涼真が、全てその対象だったに違いない。涼真は何も言わなかったため、そのことにずっと颯真は気づけなかった。だからだろうか、彼はどうしようもなく直ぐにでも兄と話がしたいと考えていた。


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