セカンドマリッジリング ―After story—
「良かった~! 無事だとは聞いていたけれど、この目で確認するまでは不安だったの」
「おいおい、美海。花那さんが苦しそうだから離してやれ、全く馬鹿力なんだから」
助手席のドアを開けた途端に花那に抱き着いた美海に、後ろから呆れた様子で名賀が注意する。それもそのはずで……彼の言う通り美海はもの凄く力が強くそのうえ思いきり抱き締められたせいで、花那はまともに息が出来ないほどだったのだから。
「ああ! ごめんね、花那さん。私ったらつい嬉しくて」
「いえ、いいんです。私の方こそ心配かけてしまって本当にすみませんでした」
今回の事で花那が悪いとは誰も思っていないのだが、自分の軽率な行動で周りに迷惑をかけたことには変わりないと彼女は深々と頭を下げた。
そんな花那の様子に颯真は「君は悪くない」と繰り返し、今度は彼が名賀夫妻に申し訳なさそうに謝った。
「もういいのよ、そんな事は。私たちは謝って欲しいわけじゃないし、こうして無事に戻ってきてくれたから」
「美海さん、名賀さん……」
それは美海の本心で、二人がこうして落ち着いた様子でペンションに帰ってきたことが何よりだった。今は落ち着いて彼女の隣で笑っている名賀も、花那が行方不明だと分かった時は颯真が見たことない程に取り乱していたくらいで。
「さあ、こんなところで話してないで部屋に戻りましょう。夕食だってまだでしょう?」
「そうだそうだ。ほら、早くしないと用意していた飯が冷めてしまう」
そう言ってペンションの中へと向かっていく二人を見ながら、颯真と花那はその様子に安心して静かに微笑むのだった。