セカンドマリッジリング ―After story—
その見えない壁の存在に


 そうして迎えた休みの日。

「本当に大丈夫か? 少し顔色も悪いように見える」

 車の助手席の乗った私の顔を颯真(そうま)さんがそっと覗き込んでくる。体調も悪くないと言ってるのに、そんなに心配しなくてもと思うがそんな優しい所も大好きだなと思う。
 ほんの少しだけ胃が痛い気もするけれどそれは仕方ない、私は颯真さんの両親にあまり好かれてはいないから。

 颯真さんの両親は彼に良家のお嬢さんとの縁談を勧めていた。それなのに連れてきたのは私のようなどこにでもいる平凡な女だったためか、そこから互いの関係がぎくしゃくしている事に私も気付いていた。
 その頃は契約結婚だからと必要以上に関わらない事で済ませていたけれど、これからはそうはいかない。

「大丈夫よ、私の事は心配しないで。颯真さんはお義兄さんたちの事を一番に考えてくれればいいの」

「何度も言うけど俺は花那(かな)が一番大事だし、君の事を真っ先に考えていたいんだ。それは何があっても変わらない、それを覚えておいてくれ」

 そんな風に言ってくれる颯真さんに胸の奥がジンとして、そこから温かなものが溢れてくるような気がする。自分の家族を大切にして欲しいのも本音だけど、その言葉はとても嬉しかった。

「ええ、覚えておくわ。私も颯真さんが一番の存在だから、それも覚えておいてね?」

「ああ、分かってる」

 そんな少し甘いやり取りをした後で、ハンドルを握った颯真さんは車を発進させた。


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