セカンドマリッジリング ―After story—
涼真の話に驚いて颯真が大きな声をあげる、普段は落ち着いて話す彼にしては珍しい事だ。それも仕方ない事だと涼真は思った、まさかそんな事が深澤カンパニーで起こるなんて彼も最初は信じられなかったのだから。
「最初はうちの商品企画部で開発された商品と同じものが先に他者から販売される、偶然かもしれないと考える程度だったんだが……今では大型事業の計画に関することまで、ライバル会社にリークされているようだ」
「そんな、馬鹿なことが?」
深澤カンパニーの代表取締役である、深澤 斗真はとても厳格な男でそんな事を許すような男ではない。もしそれが斗真に知られてしまえば、どんな厳しい制裁が待っているのか簡単に想像できる。
それなのに、情報を漏らすという事は……
「リークしている社員の将来はライバル会社に保障されているんだろうね。よほどの好待遇で迎えられるのか、それとも父さんのやり方に不満を持つ上層部の誰かの仕業なのか」
「だからって、そんな事をするなんて」
父の斗真がワンマンなところがあることは颯真も知っている、それでも彼は企業の上に立つ人間として、深澤カンパニーを一番に考え動いていることも理解していた。
……だからこそ、余計に納得できないのかもしれない。父や兄を裏切るような行為をする人間が、会社の上層部にいるという事が。
「では何故、兄さんは家を出て会社を休んでいるんだ? その方が向こうにとって都合が良くなるだけなんじゃないのか?」