セカンドマリッジリング ―After story—
「でも、そんなことをしたら兄さんの立場が!」
颯真を深澤カンパニーに問題なく入社させるためとはいえ、次期社長である涼真が行方不明になったことで彼の信頼は失われてしまったかもしれない。
必ずしも涼真の味方ばかりとは限らない社内で、それは社長に反発する人間にとって都合が良いだけなのではないかと颯真は心配したのだ。
だが、それも涼真にとっては計算の内だったようで……
「そう、だからこそ今が颯真に深澤カンパニーへと潜り込んでもらうチャンスなんだ」
「それは、どういうことなんですか? 涼真さんはいったい何を考えて……?」
涼真の考えが読めない花那は不安を感じたようで、黙っておくつもりだったのだが思わず二人の会話に口を挟んでしまう。
そんな花那の心配に気付いた涼真が、真剣な表情のまま二人に頭を下げる。
「颯真には俺の代わりに父の補佐として仕事をしてもらい、隙を見せて奴らをおびき寄せて欲しいんだ。俺では警戒して近付いてこないが、颯真なら上手く丸め込もうと接近してくる可能性があるから」
「……それは俺が、囮になるってことなのか」
その言葉に花那の方が驚いた表情を見せた、まさか涼真が可愛がっている弟の颯真にそんな事を頼むとは思ってもみなかったから。
それに、囮という事はそれなりに危険を伴う可能性もあるという事で。
「でも、それでは颯真さんが……」
そう言いかけて花那はグッと唇を噛む。自分は深澤カンパニーの事まで口出すことは出来ない、最終的にどうするのかを決めるのは颯真自身だと考えたからだ。