ショウワな僕とレイワな私
咲桜は家に着くまでの間に人の気配を感じながら帰ってきたせいか、家に入ると途端に疲れが出た。
「どうした、大丈夫かい」
清士は咲桜の表情がいつもと違うのに気がついていた。普段は眠いような顔か疲れ顔、時々楽しいことがあったのか笑顔で帰ってくることもある。しかし、この日はどこか気が抜けたような顔をしていた。
「大丈夫」
咲桜はそれだけ言って寝室へ行き、ベッドに横になった。本当に後ろをつける人がいたのか、それとも自分の思い違いだろうか。疲れているだけかもしれない。疲れていてこんなことを思ってしまうなら疲れすぎだ。でもやっぱり誰かが後ろにいた気がする。最近不審なことが続くし、あの謎の電話だって100回以上掛けてきて出てみたら無言電話だなんて、不審すぎる。しかも本当に誰かが後ろをつけていたとしても誰か分からないから余計に怖い。電話は着信拒否にしたけれど、またたくさん電話をかけてきているかもしれない。
そんなことを考えていると朝になっていた。外は段々と明るくなり、冷たい空気が肌を撫でる。もう朝ごはんを作る時間だ。昨日着た服のままメイクも落とさずに寝ていたせいで最悪の朝だった。半開きの目で洗面所にある鏡で自分の顔を見る。クマができていて生気がない。しばらくぼんやりとしていたが、どうにか顔を洗って着替えてメイクをし直す。勝手に色々と考えてしまって不安になったり落ち込んでしまったりしている場合ではないのだ。それに、私の妄想で作り上げた悩みなんて、80年も前からタイムトラベルしてきてしまった同居人に比べたらよっぽどくだらなくて、ちっぽけなものだ。
顔をペチペチと叩いて気合いを入れた咲桜がリビングに戻ると、清士がキッチンに立っていた。
「咲桜さん、おはよう。今日は僕が朝食を作るよ」
清士はフライパンを持って何かを炒めている。
「いやいや、成田さん。一応一緒に住んでるって言っても成田さんはお客さんなんだから。朝ご飯くらい私が作るから、ゆっくり座っててよ」
咲桜は清士に迷惑はかけられないと思い笑顔を見せたが、清士は笑って「そうかい」と言ってキッチンを離れるようなことはなかった。
「咲桜さん」
ダイニングテーブルを挟んで2人の目線が繋がる。
「咲桜さん、困ったことや辛いことがあったら無理するのではなく誰かを頼りなさい。ご家族でも、知人でも、誰でも良いから。僕のことも時々は頼ってくれ。咲桜さんに頼まれたならば僕はどんなことでも受けるよ」
清士は昨晩からの咲桜の様子を気にしていたが、夜が明けて一見何もなかったような顔をしておきながらやはりどこかがおかしいと勘づいていた。具合が悪いのか、何かうまくいかないことがあったのか、それか何か心配事があるのか。何か助けになることがあればと思った。
「ありがとう、じゃあ今日は成田さんにご飯作ってもらおうかな」
咲桜は少し苦笑いを浮かべた。まだこの生活に完全に慣れているはずのない清士に何かをしてもらったり任せたりするのは少し申し訳なく、何もできない自分が嫌になった。気持ちが晴れず、気合いを入れては落ち込み、また気力で頑張るという1日を繰り返すようになった。しかし、この気力でどうにか乗り越える毎日も1週間が限界だった。徐々に気持ちが張り詰めてきて、ベッドに横たわると涙が出る。暗くなるといつも誰かが後ろからつけてきている気がして、次第に昼でもそんな気がしてきていた。
「どうした、大丈夫かい」
清士は咲桜の表情がいつもと違うのに気がついていた。普段は眠いような顔か疲れ顔、時々楽しいことがあったのか笑顔で帰ってくることもある。しかし、この日はどこか気が抜けたような顔をしていた。
「大丈夫」
咲桜はそれだけ言って寝室へ行き、ベッドに横になった。本当に後ろをつける人がいたのか、それとも自分の思い違いだろうか。疲れているだけかもしれない。疲れていてこんなことを思ってしまうなら疲れすぎだ。でもやっぱり誰かが後ろにいた気がする。最近不審なことが続くし、あの謎の電話だって100回以上掛けてきて出てみたら無言電話だなんて、不審すぎる。しかも本当に誰かが後ろをつけていたとしても誰か分からないから余計に怖い。電話は着信拒否にしたけれど、またたくさん電話をかけてきているかもしれない。
そんなことを考えていると朝になっていた。外は段々と明るくなり、冷たい空気が肌を撫でる。もう朝ごはんを作る時間だ。昨日着た服のままメイクも落とさずに寝ていたせいで最悪の朝だった。半開きの目で洗面所にある鏡で自分の顔を見る。クマができていて生気がない。しばらくぼんやりとしていたが、どうにか顔を洗って着替えてメイクをし直す。勝手に色々と考えてしまって不安になったり落ち込んでしまったりしている場合ではないのだ。それに、私の妄想で作り上げた悩みなんて、80年も前からタイムトラベルしてきてしまった同居人に比べたらよっぽどくだらなくて、ちっぽけなものだ。
顔をペチペチと叩いて気合いを入れた咲桜がリビングに戻ると、清士がキッチンに立っていた。
「咲桜さん、おはよう。今日は僕が朝食を作るよ」
清士はフライパンを持って何かを炒めている。
「いやいや、成田さん。一応一緒に住んでるって言っても成田さんはお客さんなんだから。朝ご飯くらい私が作るから、ゆっくり座っててよ」
咲桜は清士に迷惑はかけられないと思い笑顔を見せたが、清士は笑って「そうかい」と言ってキッチンを離れるようなことはなかった。
「咲桜さん」
ダイニングテーブルを挟んで2人の目線が繋がる。
「咲桜さん、困ったことや辛いことがあったら無理するのではなく誰かを頼りなさい。ご家族でも、知人でも、誰でも良いから。僕のことも時々は頼ってくれ。咲桜さんに頼まれたならば僕はどんなことでも受けるよ」
清士は昨晩からの咲桜の様子を気にしていたが、夜が明けて一見何もなかったような顔をしておきながらやはりどこかがおかしいと勘づいていた。具合が悪いのか、何かうまくいかないことがあったのか、それか何か心配事があるのか。何か助けになることがあればと思った。
「ありがとう、じゃあ今日は成田さんにご飯作ってもらおうかな」
咲桜は少し苦笑いを浮かべた。まだこの生活に完全に慣れているはずのない清士に何かをしてもらったり任せたりするのは少し申し訳なく、何もできない自分が嫌になった。気持ちが晴れず、気合いを入れては落ち込み、また気力で頑張るという1日を繰り返すようになった。しかし、この気力でどうにか乗り越える毎日も1週間が限界だった。徐々に気持ちが張り詰めてきて、ベッドに横たわると涙が出る。暗くなるといつも誰かが後ろからつけてきている気がして、次第に昼でもそんな気がしてきていた。