ショウワな僕とレイワな私
「おふたりは一旦ここに座っていただいて……これから捜査の流れなどについて軽く説明させてもらいますね」
警察署に着くと大翔の姿は一見よく見えなかったが、留置所にいるような様子であった。清士と咲桜は、寺田とパトロールをしていた男性の警官から説明を聞くことになった。
「え〜と、まずですね、現在被疑者の方は現状暴行罪と拳銃の所持の疑いで、誰何*に対する返答がなかったことと逃亡の可能性があったこと、それから身分証明が不可能であったことから現行犯逮捕ということで現在留置しています。今後おふたりには参考人という形で取り調べや、もしかしたら公判で証言に協力してもらったりということがあるかもしれませんが、ぜひ事件解決のためにご協力をお願いします」
*誰何:「誰だ」と呼びかけること。
警官は日付と時間を書いた小さなメモ用紙を咲桜に手渡した。
「こちらが取り調べの日時になります。今日の15時ごろにまた署まで来ていただければと思います。先に咲桜さんの方からお話を伺って、それから同居人さんという流れですね。今日はもう遅いので特に取り調べ等は行いません」
2人は警官から帰ってどうぞと言われ、家に帰ることにした。咲桜が「ありがとうございました」と署を出ようとしたとき、寺田の呼び止める声がした。
「大戸さん、お帰りですか。少し被疑者との話し合いについてご連絡しておきたいのですが……現在被疑者は留置している状態なので、どうしても留置所の外に出てお話するということができないんですね。そこで、今日のお昼ごろにまた取り調べにいらっしゃると思うので、その時に何かノートだったり便箋だったりに被疑者に伝えたいことを書いていただいて私に手渡していただければこちらでお預かりする形がいいかなと思うので、もしよかったら明日そういったものをいただければこちらで対応させていただきます。被疑者の方から返事などがあればその分も大戸さんにお渡ししますので」
「わかりました。わざわざありがとうございます」
咲桜は寺田にペコリとお辞儀をして署を出た。清士も会釈をして桜の後ろに続く。
「成田さん……本当に面倒なことになっちゃってごめん」
咲桜は少し下を向いたまま歩いている。
「いったいどこが面倒なんだ。咲桜さんを迎えに行ったのは僕の勝手だし、咲桜さんの前に立ったのも僕の勝手だ。君が申し訳なく思う必要はこれっぽっちも無いんだよ」
「そうだとしても……これから警察に取り調べされるとなったら、成田さんのプロフィールとか家族のこととか、そういうのも聞かれるはずだから面倒なことになったと思うの。タイムトラベルしてしまった世界で取り調べされるなんて説明がつかないし、下手なことを言ったら怪しまれて成田さんの立場が危うくなるかもしれないし」
清士はすっかり令和の世界に慣れてしまっていたが、確かに昭和の人間である。咲桜の言葉でそう思い知らされた清士は、どことなく疎外感を感じた。
警察署に着くと大翔の姿は一見よく見えなかったが、留置所にいるような様子であった。清士と咲桜は、寺田とパトロールをしていた男性の警官から説明を聞くことになった。
「え〜と、まずですね、現在被疑者の方は現状暴行罪と拳銃の所持の疑いで、誰何*に対する返答がなかったことと逃亡の可能性があったこと、それから身分証明が不可能であったことから現行犯逮捕ということで現在留置しています。今後おふたりには参考人という形で取り調べや、もしかしたら公判で証言に協力してもらったりということがあるかもしれませんが、ぜひ事件解決のためにご協力をお願いします」
*誰何:「誰だ」と呼びかけること。
警官は日付と時間を書いた小さなメモ用紙を咲桜に手渡した。
「こちらが取り調べの日時になります。今日の15時ごろにまた署まで来ていただければと思います。先に咲桜さんの方からお話を伺って、それから同居人さんという流れですね。今日はもう遅いので特に取り調べ等は行いません」
2人は警官から帰ってどうぞと言われ、家に帰ることにした。咲桜が「ありがとうございました」と署を出ようとしたとき、寺田の呼び止める声がした。
「大戸さん、お帰りですか。少し被疑者との話し合いについてご連絡しておきたいのですが……現在被疑者は留置している状態なので、どうしても留置所の外に出てお話するということができないんですね。そこで、今日のお昼ごろにまた取り調べにいらっしゃると思うので、その時に何かノートだったり便箋だったりに被疑者に伝えたいことを書いていただいて私に手渡していただければこちらでお預かりする形がいいかなと思うので、もしよかったら明日そういったものをいただければこちらで対応させていただきます。被疑者の方から返事などがあればその分も大戸さんにお渡ししますので」
「わかりました。わざわざありがとうございます」
咲桜は寺田にペコリとお辞儀をして署を出た。清士も会釈をして桜の後ろに続く。
「成田さん……本当に面倒なことになっちゃってごめん」
咲桜は少し下を向いたまま歩いている。
「いったいどこが面倒なんだ。咲桜さんを迎えに行ったのは僕の勝手だし、咲桜さんの前に立ったのも僕の勝手だ。君が申し訳なく思う必要はこれっぽっちも無いんだよ」
「そうだとしても……これから警察に取り調べされるとなったら、成田さんのプロフィールとか家族のこととか、そういうのも聞かれるはずだから面倒なことになったと思うの。タイムトラベルしてしまった世界で取り調べされるなんて説明がつかないし、下手なことを言ったら怪しまれて成田さんの立場が危うくなるかもしれないし」
清士はすっかり令和の世界に慣れてしまっていたが、確かに昭和の人間である。咲桜の言葉でそう思い知らされた清士は、どことなく疎外感を感じた。