ショウワな僕とレイワな私
午前中の大学の講義を終えた咲桜は、警察署へ直行した。清士とは警察署の入り口の前で待ち合わせている。咲桜が警察署に着いたときにはすでに清士がいて、咲桜が到着したと同時に建物の中に入った。
「こんにちは」
警察署に入るとすぐに寺田が席を立って2人を迎えに出た。
「来てくださってありがとうございます。今朝被疑者の取り調べが済んだところなので、早速同居人さんの方からお話を伺っても大丈夫ですか。大戸さんは……昨晩お伝えした手紙なんかがあれば今受け取ります」
寺田にノートを渡した咲桜は清士の次に取り調べがあるようで、座って待つように案内された。咲桜は清士が問題なく取り調べを受けられるのかが心配で目配せした。清士はそれに応えるように頷き、取調室へ向かう。
「こちらに座ってください」
警察署の奥にある小部屋の中央には大きな机に2つの椅子、そして部屋の隅に小さな机と椅子。どちらも事務用品のようで、部屋全体が薄暗く冷淡な印象を持たせる。寺田は部屋の隅の机に向かいパソコンを開いて調書を書く準備を始めた。清士の目の前には、事件当日に寺田とパトロールをしていた男性警官が座っている。
「それでは……まずはあなたの個人的な情報について聞かせてもらいますね。お名前と住所、生年月日、職業と電話番号を教えてください」
「名前は成田清士、清らかな武士の『士』で清士です。住所は東京都中央区八丁堀……」
清士は淡々と名前と住所を話していく。
「2003年9月25日生まれで、今は大学生です。電話番号は080……」
取調室には清士の声とパソコンのキーを打つ音だけが鳴り響く。
「被疑者との面識や関係性はありますか」
「面識はありません。ただ、大戸さんから半年前に別れた男性がいたという話を聞いていて、大戸さん宛に送られた白い封筒の手紙……彼女がここの警察署にストーカーの相談をしたときに提出した手紙、の中に僕のことが『浮気相手』というような形で書かれていたので、その男性が彼で、彼からそのように認識されているということは分かっていました」
清士の目の前に座る警官は、目の前に置いていたノートパソコンを開いて清士に見せる。
「これは事件当日の防犯カメラの映像です。成田さんはどの人物ですか」
画面に映る3人を見た清士は、中央の人物を指した。
「これです。この拳銃を向けられているのが僕です」
警官はノートパソコンを自分の方に向け、今朝作ったのであろう大翔の供述調書を見て質問を続けた。
「被疑者は大戸さんと話すために手を伸ばしたところ成田さんに腕を掴まれたと供述していますが、それは本当ですか」
清士は即座に首を横に振る。
「いいえ。僕は彼が大戸さんを付きまとっていることを知っていましたし大戸さん自身が彼を恐れていたことも分かっていました。実際、彼女は彼の声を聞いただけで立ちすくんでしまっていたので、あくまでも彼女が彼に触れられることで恐怖を感じるのを防ぐために僕の腕を伸ばして牽制はしましたが、彼の腕は掴んでいません」
警官は防犯カメラの映像を見ながら確かにそうだと思った。そしてそれ以外の供述調書を読み上げる。
「これまでの内容で事実と異なるところはありますか」
「ありません」
供述調書を置いた警官は、清士の目を見て話を続ける。
「これで最後です。成田さんは被疑者に罰を受けてほしいと思いますか」
清士は真っ直ぐな目で答えた。
「はい。大戸さんは彼のことで大変な思いをしましたし、僕にも無礼な行動だと思います。罰が下されるのであれば、きちんと受けていただきたいです」
「こんにちは」
警察署に入るとすぐに寺田が席を立って2人を迎えに出た。
「来てくださってありがとうございます。今朝被疑者の取り調べが済んだところなので、早速同居人さんの方からお話を伺っても大丈夫ですか。大戸さんは……昨晩お伝えした手紙なんかがあれば今受け取ります」
寺田にノートを渡した咲桜は清士の次に取り調べがあるようで、座って待つように案内された。咲桜は清士が問題なく取り調べを受けられるのかが心配で目配せした。清士はそれに応えるように頷き、取調室へ向かう。
「こちらに座ってください」
警察署の奥にある小部屋の中央には大きな机に2つの椅子、そして部屋の隅に小さな机と椅子。どちらも事務用品のようで、部屋全体が薄暗く冷淡な印象を持たせる。寺田は部屋の隅の机に向かいパソコンを開いて調書を書く準備を始めた。清士の目の前には、事件当日に寺田とパトロールをしていた男性警官が座っている。
「それでは……まずはあなたの個人的な情報について聞かせてもらいますね。お名前と住所、生年月日、職業と電話番号を教えてください」
「名前は成田清士、清らかな武士の『士』で清士です。住所は東京都中央区八丁堀……」
清士は淡々と名前と住所を話していく。
「2003年9月25日生まれで、今は大学生です。電話番号は080……」
取調室には清士の声とパソコンのキーを打つ音だけが鳴り響く。
「被疑者との面識や関係性はありますか」
「面識はありません。ただ、大戸さんから半年前に別れた男性がいたという話を聞いていて、大戸さん宛に送られた白い封筒の手紙……彼女がここの警察署にストーカーの相談をしたときに提出した手紙、の中に僕のことが『浮気相手』というような形で書かれていたので、その男性が彼で、彼からそのように認識されているということは分かっていました」
清士の目の前に座る警官は、目の前に置いていたノートパソコンを開いて清士に見せる。
「これは事件当日の防犯カメラの映像です。成田さんはどの人物ですか」
画面に映る3人を見た清士は、中央の人物を指した。
「これです。この拳銃を向けられているのが僕です」
警官はノートパソコンを自分の方に向け、今朝作ったのであろう大翔の供述調書を見て質問を続けた。
「被疑者は大戸さんと話すために手を伸ばしたところ成田さんに腕を掴まれたと供述していますが、それは本当ですか」
清士は即座に首を横に振る。
「いいえ。僕は彼が大戸さんを付きまとっていることを知っていましたし大戸さん自身が彼を恐れていたことも分かっていました。実際、彼女は彼の声を聞いただけで立ちすくんでしまっていたので、あくまでも彼女が彼に触れられることで恐怖を感じるのを防ぐために僕の腕を伸ばして牽制はしましたが、彼の腕は掴んでいません」
警官は防犯カメラの映像を見ながら確かにそうだと思った。そしてそれ以外の供述調書を読み上げる。
「これまでの内容で事実と異なるところはありますか」
「ありません」
供述調書を置いた警官は、清士の目を見て話を続ける。
「これで最後です。成田さんは被疑者に罰を受けてほしいと思いますか」
清士は真っ直ぐな目で答えた。
「はい。大戸さんは彼のことで大変な思いをしましたし、僕にも無礼な行動だと思います。罰が下されるのであれば、きちんと受けていただきたいです」